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『9マイルは遠すぎる』を読んで、俺は論理的思考の虜になった。深い意味など何もなさそうな会話の断片から、大事件を解決できるだなんて、まさに神業だ。
以来、それ系の推理小説を読み漁って、探偵の思考を何度も何度も辿り直し、数ヵ月後には、目を瞑っていても、その複雑な論理展開を追えるようになっていた。
「教えることは、もう何もない」
書棚にずらりと並んだ本格派推理小説のボロボロになった背表紙達が、優秀な弟子であるこの俺を賞賛してくれている。
さあ、いよいよ外に出て、卑劣な悪を暴く時が来たのだ!
会話の断片を求めて、俺は駅へ向かった。すると、あちらからやってきた学生っぽい男女とすれ違った。その時、お誂え向きに、その会話の一部が耳に入ってきた。
「ベートーベンって、ショパン?」
俺は愕然として立ち止まった。
論理的思考の歯車は、あっけなく崩れ去った。
ん? 雨かな? いや涙だった。
以来、それ系の推理小説を読み漁って、探偵の思考を何度も何度も辿り直し、数ヵ月後には、目を瞑っていても、その複雑な論理展開を追えるようになっていた。
「教えることは、もう何もない」
書棚にずらりと並んだ本格派推理小説のボロボロになった背表紙達が、優秀な弟子であるこの俺を賞賛してくれている。
さあ、いよいよ外に出て、卑劣な悪を暴く時が来たのだ!
会話の断片を求めて、俺は駅へ向かった。すると、あちらからやってきた学生っぽい男女とすれ違った。その時、お誂え向きに、その会話の一部が耳に入ってきた。
「ベートーベンって、ショパン?」
俺は愕然として立ち止まった。
論理的思考の歯車は、あっけなく崩れ去った。
ん? 雨かな? いや涙だった。
ミステリー・推理
公開:19/06/08 12:39
更新:19/06/08 13:44
更新:19/06/08 13:44
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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