5分後の未来

　エヌ博士がタイムカメラを完成させた。記者会見場でエヌ博士は記者達に向かって、
「タイムカメラは、未来を撮影できるカメラです。カメラが未来へ物理的に移動する訳ではなく、特殊な原理で未来の映像を撮影する仕組みとなっています。試作段階なので５分後の未来しか撮影できません」
　エヌ博士は、背後のスクリーンを指さして、
「これから投影する映像は、今から５分後の記者会見場となります。では、ご覧下さい。これが未来の世界です」
　スクリーンに投影された映像は、この記者会見場に間違いはなかった。だが、そこは血まみれの死体が折り重なる惨劇の場になっていた。
「…これは失礼。タイムカメラの視点を変えて町全体を写してみましょう」
　タイムカメラが捉えた５分後の街並みは、硝煙がたなびく見るも無残な焦土と化していた。誰かが叫んだ。
「５分後に何が起きるんだ！」
　しかし実際は、あと２分と少ししかなかった。