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昔、吾平と言う青年がいた
青年は父親と自分の二人暮らし。二人は漁師をやっており、取れた魚を街に売りに行って生計を立てていた

そんなある日、吾平は海である物を見てしまった
遠くの方に友人の吉兵衛の船を見かけたので声を掛けようとした矢先の事だった
なぜか、その船の周りだけバケツで水をひっくり返したような豪雨が降っているのだ。それもよく見ると、そこには怯えた様な表情の吉兵衛と一人の美しい女性。しばらく黙って様子を見ていると吉兵衛は船と共に沈み、女性はスゥーっと消えていった
吾平は「なんて恐ろしいものを見てしまっただ。くわばらくわばら」と念仏を唱え、見て見ぬ振りをする事しかできなかった
数日後、吾平はまた、あの時の女性に出会った。吾平は聞いた。
「俺も吉兵衛と同じ様に殺すのか」
「いいえ、あなたが誰にもあの時の事を言わなければ命までは取りませんよ」

数年後、吾平は時雨と言う若い女性と結婚した。
公開:19/06/04 11:09
更新:19/06/04 11:14

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