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久しぶりの白夜になると、森の予報士は言った。
旅先の海で、夜通し明るい空を眺めていたのはいつのことだったか。
あのときはまだ、隣にオットセイがいた。
体がとても大きくて、やさしい目をした夫は、時折変わったポーズで、アォッアォッっと啼いた。あれはいったい何を訴えていたのか。
あの日海辺の食堂で、焼きはまぐりを3トンほど食べた夫。
青ざめた店主の顔は今でもはっきりと覚えている。
他界した両親は最後まで私たちの結婚を認めなかった。
あの食欲では無理もない。
そもそも私たちは種が違う。生き方が違う。子もない。夫婦生活は長くはなかった。
思い出の海。
よく晴れて、美しい夕暮れが過ぎても、空はいつまでも白い。気持ちよい風が私のおしりを撫でて、ふっと光りたくなる。
夫、せいは、少し口臭がきつかったけれど、私に幸せの日々をくれた。会話が成立しないことなど些細なこと。
私は北限の蛍。
白夜は少し照れくさい。
公開:19/06/06 15:54
更新:19/06/06 15:56

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