雨メガネ

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「なんだこれ?」
友人のサトルからメガネを渡されたので、ケンジはそれをかけてみた。が、特別見えやすくはならない。
「そっちじゃない、あの子を見てみろよ」
ケンジが言われるままにその子を視界に入れる。すると突然雨が降ってきた。
「わっ、今まで晴れてたのに!」
「メガネを外してみろよ」
「はあ?」
そう言いながらもケンジはメガネを外す。
「え、なんで?」
メガネを外した途端雨は止んでしまった。
「雨メガネ、っていうんだ」
サトルの話によると、このメガネは雨メガネといって小雨から土砂降りまで、人間の悲しみの心の状態が雨になって見えるという。
雨メガネを借りたケンジは、色々な人間の心を見た。

「あんたって馬鹿だね、ケンジ」
ケンジの母親がすすり泣いている。
踏切自殺をする人を止めようとして、ケンジは電車に轢かれて死んでしまった。
サトルは「ごめんな。お前の母さん、土砂降りだよ」そう言って泣いた。
その他
公開:19/06/06 15:18
更新:19/06/07 13:12
#メガネ

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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