不可能殺人

「事件から半年、ついに容疑者の女性を逮捕しました。研究施設で働く職場の同僚男性を殺害した容疑です」
警察の記者会見で担当警部はかしこまって次のことを報告した。

・殺害現場は研究施設の個室
・死因は窒息死であった
・誰かと争ったような外傷は見つからなかった
・部屋は頑丈なドアで厳重に内側からロックされていた
・窓ガラスが割られていたが、破片は部屋内に落ちていなかった
・部屋の床や壁、天井などに犯人の足跡などの痕跡は見つからなかった


記者のひとりが質問する。
「それでは容疑者はどのようにして殺人を犯したのですか？」

警部は答えた。
「容疑者の女性は宇宙服を着て、宇宙ステーションの外から被害者男性の部屋の窓を破壊したと思われます。容疑者確保に時間がかかりましたので動機の究明はこれからですが、おそらく男女関係のもつれでしょう」