セカンドオニオン

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20XX年。度重なる悲劇に見舞われた世界は、もう泣くことをやめてしまった。
どんな出来事や芸術作品に接しても、人の目から涙が流れることはなく、僕自身もバンド仲間を失ったときですら泣けなかった。というか"泣く”という言葉も死語になりかけていた。
そこで開発されたのが、品種改良された玉葱を用いた治療法だ。これを目の前に近づければ涙腺や感情が元通りになり、泣くことが出来るようになる。
もし最初に効果がなくても、無償で別の玉葱を試せるセカンドオニオン制度だってある。この病院を訪れたのも、以前掛かった医者からの紹介状によるものだ。
「あのう、こいつを診てもらいたいんですが」
「ああ、あなたじゃないのか。どうりで……。大丈夫、人間以外に効く玉葱もあるから」

外に出ると、既に辺りは暗くなっていた。
「友よ、聴いてくれ」
治療は大成功。星空に泣きのギターが響いた。
SF
公開:19/06/05 21:08
更新:19/06/06 14:05

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