旧人類園

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二人のお気に入りの場所、夕焼けの見える丘で彼は私に言った。
「結婚してくれないか?」
私は戸惑う。
「嬉しいけど、でも、私達いま、注目の的なのよ?」
「いいんだ、それでも。永遠の命を君に捧げるよ」
わっ、という歓声。周りから拍手が巻き起こる。
「ふたりで幸せな家庭を作ろう」
彼は一輪の野の花を渡してくれた。

時は西暦3000年。ここは旧人類の展示されている旧人類園。
「延命剤は打ったか?」
「はい、一週間前に接種済みです」
「2000年代前半の貴重な生き残りだからな。しっかり管理しておけよ」
園長が釘をさす。
「カップルの結婚も成立したことだし、また客も増える。次は繁殖だな。しかし繁殖すると、ここから逃げ出そうと試みる旧人類が増えるから注意しろ。あいつらには我々の克服した『寿命』を感染させるウイルスがあるからな」
いまや旧人類「ヒト」は、新人類に管理された園で永遠の命を生きる。
SF
公開:19/06/05 14:34
#カップル #結婚

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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