出窓の白い猫

8
8

「この子は私を守ってくれたんだ」
 ミキはそう言って、出窓で寝ている真っ白な子猫を撫でた。
 結婚して、新居が建って、ミキは『夢がかなったよ』と言っていた。
「何かあったの?」と尋ねると、ミキはこんな話をした。
「幼稚園のとき泥棒が入ったんだって。親は留守で私一人で寝てた。泥棒が私を覗き込んだとき、私、泣いたんだって。その瞬間、『殺すしかない』って思ったって。でも、出窓で寝てた白い猫を見たら急に冷静になって、その足で交番に自首したんだって」
「へぇ~。でも……」と私は戸惑った。猫はまだ子猫だったからだ。ミキはそんな私を見て、「あ、違う違う」と話を続けた。
「うちは母が猫アレルギーで、ずっと猫は飼ってなかったし、古い家だったから出窓なんてなかったんだ。それは私の夢だったの。出窓のある素敵なお家で、白い猫と一緒に住むこと。それが、実現したんだ」
 ミキはそう言うと、本当に幸せそうに笑った。
ファンタジー
公開:19/06/05 12:51
更新:19/06/06 06:45
宇祖田都子の話

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容