不得手な話

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アカウントを作成した際、ここに掲げられたジャンルを、とりあえず一巡しようと決めていた。当然のようにこのジャンルが最後になって、そして全くネタがなかった。
横たわったまま、スマホを見つめてウンウン唸っていると、隣で同じく寝そべっていた友人が頭を起こして肘をついた。
「今、短い恋のお話を書こうと思っているんだけれど」問われぬ先に私は話す。「どうもおれはこれが苦手のようだ。こと恋愛に関しては、全てが薄っぺらく見えてしまう」
友人はのそりと起き上がって煙草を手に取ると、一本咥えて火をつけた。伸びた前髪と紫煙を五月蝿そうに払って、私を見下ろす。
「それはさァ、お前が薄っぺらい恋しかできないからだよ。だからさァ、その薄さを書いたらいいんじゃない」
なるほど、と思って私は頷いた。
「できたら読ませてよ」
気怠い微笑とキスを残して、友人はシャワーを浴びに行っている。それで私は、この話を書き始めたのだった。
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公開:19/06/02 23:55

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