インターフォンを押す前に

2
7

私がインターフォンを押すと彼がドアを開ける。びしょ濡れの私に彼が驚く。
「急に降ってきちゃって。あの、タオル借りてもいい?」
私は彼からタオルを受け取って、濡れた髪に当てる。
「借りてた本を返そうと思って…」
「今日じゃなくてもよかったのに」
雨に濡れた薄手のシャツから下着が透けて見えて彼が視線を逸らす。
「とっても面白かったから。貸してくれたお礼とか、感想とか話せたらいいなって」
そこまで言ってから、可愛くクシャミをして体を震わせる。心配した彼が私を見る。濡れた前髪と上目使いで、黙って彼の言葉を待つ。
「上がってく?今、温かいもの入れるから」
そう言ってくれたら百点。言わなきゃ、「上がってもいい?」と遠慮がちに言う。
草食系男子にはこれぐらいやらなきゃダメなのよ。

ブワァックショーイッ!

あああ、ホントに風邪ひきそう。
何としても既成事実を作ってやる!

私はインターフォンを押した。
恋愛
公開:19/06/02 21:56

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容