僕は過去の君の声を聴く

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家に帰ってくると、沙羅からのメッセージが届いていた。
「勇治!? 元気? 今は2050年の6月2日9:03だよ! ……」
そうか、半年前のメッセ―ジなんだね。

お互い顔を合わせて話をしたことが懐かしいよ。
あの出来事から、僕は過去の君の声を聴くことしか出来なくなった。
最初はわずか数秒前だったのが、数日になり、今や半年。
君の声が届かなくなるのも時間の問題だろう……。

第三次世界大戦で人類は滅亡の縁に立つことになり
人類はすべての希望を移住可能な惑星「エデン」に託した。
選ばれたごく少数の人が移民船で数十年もの旅をすることになり、
僕はくじに外れ、君は当たった。

せめて僕の子孫と君の子孫が再び出会えるように
そう思って全力を尽くしてきた。

……あれからもう数十年か、僕は死の床についていた。
おぼろげな意識の中、沙羅が僕に微笑むのが見える。
そしてその手をとり全ての意識を手放した。
SF
公開:19/06/02 18:56
更新:19/06/02 19:05

ばめどー

ぼちぼちやっていこうと思います。
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