存在しない建物

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「ようやく、完成したな」
恰幅の良い、頭に白の手ぬぐいを巻いた男が、そびえたつ架空の建物を仰ぎ見て、三人の仲間に言った。

「そうだな。俺達の汗と涙の結晶が詰まった傑作だからな。一生、色あせずにこの彩色のない街を彩ってくれるだろうな」
仲間の一人は、手に持つ金槌で軽く自分の手の平を叩いた。

「俺は一生、この架空の建物が建たないと思って心配していた」

「全員、そう思ってたはずだろ」
全員で顔を見合わせ、柔やかに笑った。

その後、俺達が建築した架空の建物は、今も尚、廃れた街を彩っている。
時代の風が時にふり、錆び付いた雨がそれを濡らし、壊そうとしても、不動のまま、静観している。

勿論、この話は架空だ。
故に、この仲間達が建築したものは虚勢である。
その他
公開:19/06/02 17:49

神代博志( グスク )









 

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