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「連日、友達の家を泊まり歩くだなんて非常識です」
 新任教師は、太郎(小四)の家を訪れて、両親にそう言った。
 太郎は、一緒にいる人を幸せな気分にした。太郎が泊まりに来ると良いことがある、などという噂まで広まっていた。
「どうしてもっていうなら、先生一人で行ってよ」
 家庭訪問のことを告げると、太郎は珍しく顔を曇らせた。
 家は古いアパートだった。両親は正座をして担任を迎えた。
「私達夫婦は似たもの同士でした。関わった人たちが必ず不幸になるのです。私達は他人を巻き込まないで済むよう、一緒になりました。マイナス同士の子供だからか、太郎には人を幸せにする力がありました。私たちといると、この子は魅了と力とを失ってしまうかもしれない。だから太郎には、家に帰ってくるなと教えました」
 担任は「それは間違っています」と建前論を並べた。だが、両親の決意は変わらなかった。
 ほどなく担任は、自己破産した。
その他
公開:19/06/02 09:24

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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