この夜を越えて

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夜に怖くなると、よくお母さんの布団に潜り込んだ。そんなとき、お母さんはきまってお話を聞かせてくれた。

「お父さんから聞いた話なんだけどね」

語り初めはいつも同じだった。お父さんは潜水艦乗り。誰も知らない世界のお話に、僕はいつもワクワクして怖さを忘れちゃうんだ。

「光が届かない海の底は、音だけが頼りなの。誰にも気付かれぬよう耳をすましてるとね、ある日、ハッチの外からノックが聞こえて…」

僕はぞっとして、布団に顔をひっこめた。お母さんは小さく笑う。

「みんな怖がって仕事にならない。そこで艦長さん、落ち着き払ってノックを返したんだって。入ってますよー、ってね。チャンチャン」

なんだよ。ちっともおかしくない。僕は怖さを紛らわせようと、お母さんに手を伸ばす。

あれ?お母さんがいない。暗闇の中にあるのは、布団の冷たさだけ。慌てて手足をジタバタ振り回すと、床の下から…。

トントン。
ファンタジー
公開:19/06/01 23:07

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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