あなたはまだひとりですか（下）

「のぞみさん、出来た？」
「今行く」
仕上げにネクタイを締めた。シャンパンゴールドのストライプ。少し派手だが、無難にホワイトって柄じゃない。
「良い感じ」
「惚れ直した？」
「直しては、ないかな」
結婚二年。出会ってからだと二十数年。未だにこうして言い合える。
同じくシャンパンのサテンのドレス。花瓶の群雀蘭（オンシジューム）を二本取り、スーツの胸と彼女の髪に飾る。
「花嫁さんより目立つかも」
「向こうも花屋だし、蘭には蘭の花でないと」

『一緒に踊って。オンシジュームの花言葉。二本渡してダンスにでも誘え。『パートナー無しじゃ淋しいだろ』とか、歯の浮く様な台詞で』
もみじめ、勝手な事を。
『蘭、大分前から、お前の事好きだぞ』
悔しいからそのまま使った。目出度く成就したぞ、ざまぁ見ろ。
招待状の差出人を再確認し、仏壇から、蘭のお父さんのタバコを一本拝借。
友人代表のスピーチで、ネタにしてやる。