夢を乗せたAtoZ

6
5

思い出は創る。そう信じてる。
手に握った10円玉。
昭和39年の銅貨。
目をつむり、念じた。
場所は喫茶店。
親戚のふりをして、学生時代の
母に近づいた。
ちょっとの好奇心から恋に変わる。
危険だと判断し、さよならをした。
彼女は寂しく思ったのか
「今度会える?」
と聞いてきた。
僕は目を見て答えた。
「きっと」
店のドアを閉めた時、
後悔はなかったかと自分に問う。
帰ってきて、あの頃の事を母に聞いた。
母は
「今も大事な思い出よ」
と嬉しそうに語った。
僕は吹っ切れた気がした。
目の前の彼女は変わらなかった。
次の日の日曜日。
東京駅に着いた列車。
降りてきた幼なじみは、
「お母さんはどうだった?」
と問う。
「君と同じ大切な人だったよ」
僕はそう答えた。
また、列車はやって来る。
最終列車は始発列車に切り替わる。
それは人生も同じ事。
僕は彼女の肩に手を添え、一緒に階段を降りた。
SF
公開:19/06/03 11:39

小脇 進( 埼玉県 )

小脇 進と申します。
まだ小説も、ショートショートも書くのは初心者です。
※最近は詩作を中心に活動しています。

「分かってないなあコイツ」
と思っても、温かく見守っていて下さい。
よろしくお願いします。
                                                                               
2019年5月19日(日)17時55分頃より始めました。
以上です。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容