ネクラが献血

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私の名前はナクラ ユカリという。小学校からのあだ名は「ネクラ」だ。
本当のことだから仕方ない。内向的で人見知りで暗く目立たない。折り紙で作る鶴だけが私の友達だ。
「落ちたよ」
「あ、はい」
腰を屈めて拾おうとした鶴を、その男の人が拾ってくれた。目線をあげると胸の名札にヤベ アキラ、と書いてある。看護師さんだ。
「初めて?」
「あ、はい」
「大丈夫だよ、皆プロだから」
「あのっ」「ん?」「私なんかが献血したら患者さんにネクラがうつりませんか?」ヤベさんは一瞬驚いたけど、すぐに優しく微笑んだ。
「大丈夫。君の勇気が患者さんを助けるんだよ」
目の前に光が差したようだった。私も人の役に立てる。それが心から嬉しかった。

「また献血に行くのかい」「うん」「凄いな、君は」
あなたが教えてくれたからだよ。心の中でそう呟く。
「ヤベ ユカリさん、どうぞ」
今日の夕飯はアキラさんの好きなレバニラにしよう。
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公開:19/06/03 09:06
更新:19/06/16 23:59
#献血

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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