パズル跡

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私が生まれた時、両親は号泣して喜んだという。私の出生はたちまち国中に知られた。
私の体には「パズル跡」がある。ジグソーパズルみたいな小さなピースの跡。生まれる前に神様が、私の体をパズルを組み立てるように作ったという証。神に近い人間で、不死の命を持っている。そのおかげで私は周囲の人間に崇め奉られて育った。
でも、私はこのパズル跡が醜くて嫌だった。ママは可愛いと言ってくれたけど。友達にも距離を置かれ、孤独で、どうして私だけといつも思っていた。
そのママが目の前に倒れている。
そうか、と気づいた。私はママを助けるためにこの力を授かったのだ。
パズル移動。不死の力を移す。私にしかできないこと。私は死んじゃうけど。
「私を産んでくれてありがとう、ママ」
薄れてゆく意識の中、ママが起き上がるのが見えた。
「ふぅ、やっとだわ」
顔中にパズル跡のついたママがニヤリと微笑む。
「ありがとうね、アヤ」
SF
公開:19/05/31 14:29
#ショートショート

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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