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電線に蔓が絡んだと連絡を受け、撤去に向かう。
現場では、藤らしき灰茶の蔓が複雑に絡み、一筆書きの滝か、針金の亡霊めいた奇天烈な造形を、架線から地上へ届かせていた。一般配線だから漏電の危険は少ないが、重みで切れると厄介だ。早速クレーンで作業に入る。
おもむろに蔓の束を掴む――ねばり、納豆の糸を引く様な粘性の伸縮。手袋がにちゃりとへばり付き、指が離れない。
蜘蛛の糸の強度は、鋼鉄の数倍。
考えてしまったのは、背後に蠢く音を聞いたからだ。――ゴソ、ゴソリ。忍び寄る音は架線を撓ませ、作業着の肩へ、人の腕程もある肢を掛けた。振り払えずに振り向く。空を映す八つの眼と目が合った。青空の柄をした巨大な蜘蛛が、綿雲に擬した顎をギチギチ開閉させた。
ひっと息を呑むのと、蜘蛛が忽然と消えるのは、どちらが早かったか。
玉結びの端を、糸切り鋏で断つ音。ジェット機に化けた雪加が、空蜘蛛を嘴に咥え、ヒッヒッと嗤った。
現場では、藤らしき灰茶の蔓が複雑に絡み、一筆書きの滝か、針金の亡霊めいた奇天烈な造形を、架線から地上へ届かせていた。一般配線だから漏電の危険は少ないが、重みで切れると厄介だ。早速クレーンで作業に入る。
おもむろに蔓の束を掴む――ねばり、納豆の糸を引く様な粘性の伸縮。手袋がにちゃりとへばり付き、指が離れない。
蜘蛛の糸の強度は、鋼鉄の数倍。
考えてしまったのは、背後に蠢く音を聞いたからだ。――ゴソ、ゴソリ。忍び寄る音は架線を撓ませ、作業着の肩へ、人の腕程もある肢を掛けた。振り払えずに振り向く。空を映す八つの眼と目が合った。青空の柄をした巨大な蜘蛛が、綿雲に擬した顎をギチギチ開閉させた。
ひっと息を呑むのと、蜘蛛が忽然と消えるのは、どちらが早かったか。
玉結びの端を、糸切り鋏で断つ音。ジェット機に化けた雪加が、空蜘蛛を嘴に咥え、ヒッヒッと嗤った。
ファンタジー
公開:19/05/31 10:47
更新:19/05/31 10:49
更新:19/05/31 10:49
雪加(セッカ)の巣作り
~日本の野鳥
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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