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玄関戸は、縄目を編んだ『スウィートピー』で、鉄枠の下は、瑠璃青の色硝子が入っていた。
目隠しの衝立は、金糸雀色の『チェッカー』と、煙硝子の『モール』を市松に並べ、手洗いと風呂は『ハイウェイ』、明かり取りは『このは』、ドアの小窓はテーブルカットに『石目』を散らしてあった。
部屋の仕切りは『ときわ』に覆われ、台所は『こだち』と『からたち』が交互に茂り、勝手口は『のみち』が入り組み、階段の天窓は、霞に不規則な罅を刻んだ『よぞら』が煌めいていた。外に面した窓は、嵌め殺しの『ダイヤ』か『まさご』が張り巡らされ、差し込む光は、朝も昼も夕も、波打つ様に揺らめいた。木々の枝が風に吹かれて見える影は、硝子に織り込んだ鋼線が作るものである事を、私はぼんやり知っていた。
切子の盃を遠眼鏡に、電灯の傘の『かげろう』を覗く。白々と降り注ぐ人口の光を浴びながら、私はまだ、硝子に歪められない、外の景色を知らないでいた。
目隠しの衝立は、金糸雀色の『チェッカー』と、煙硝子の『モール』を市松に並べ、手洗いと風呂は『ハイウェイ』、明かり取りは『このは』、ドアの小窓はテーブルカットに『石目』を散らしてあった。
部屋の仕切りは『ときわ』に覆われ、台所は『こだち』と『からたち』が交互に茂り、勝手口は『のみち』が入り組み、階段の天窓は、霞に不規則な罅を刻んだ『よぞら』が煌めいていた。外に面した窓は、嵌め殺しの『ダイヤ』か『まさご』が張り巡らされ、差し込む光は、朝も昼も夕も、波打つ様に揺らめいた。木々の枝が風に吹かれて見える影は、硝子に織り込んだ鋼線が作るものである事を、私はぼんやり知っていた。
切子の盃を遠眼鏡に、電灯の傘の『かげろう』を覗く。白々と降り注ぐ人口の光を浴びながら、私はまだ、硝子に歪められない、外の景色を知らないでいた。
ファンタジー
公開:19/05/31 01:35
更新:19/05/31 01:36
更新:19/05/31 01:36
『』内は、実在する型板硝子
(模様の入った硝子)です。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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