お弁当

本の虫である私は食事の時間になると人気者になる。
私の主食は本を読むことである。だから食事時になると皆が音読してほしい本を持ってくる。
私は本で食事が出来るし、皆は私の話す物語で食事を楽しむことが出来る。まさに一石二鳥である。
私は学校では放送部に所属している。お昼休み、皆が私の放送を楽しみにしてくれているのはありがたいことだ。
そんな私、人並みに遠足が楽しみである。
いつも放送室のブースで一人食事を取る私にとって、遠足は皆とお弁当を囲めるかけがえのない時間だ。
私は皆が見守る中、お弁当である本を手に立ち上がる。まるで舞台俳優のように大立ち回りを繰り広げながらも息一つ上がることなく食事をする。
はしたない行為であることは分かってる。でも遠足の時ぐらいいいじゃないか。
私は両親に感謝している。読書が好きな本の虫である父と人を魅了する声を持ったセイレーンの母の遺伝子を存分に受け継いだのだから。