1番病

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テニススクールのトレーナーをしている。初心者対象なのでみんな気楽に和気あいあいとやっている。そんな中、一人だけ目の色が違う受講者がいた。

「ずいぶんと熱心にやっていますね」声をかけた。
「一番になりたくて」
子供の頃から親に『何かするときには必ず一番になりなさい』と言われて育ったそうだ。だからここでもその中の一番になりたいらしい。

翌週。その生徒の動きが格段によくなっていた。スイングも美しい。かなりレベルアップしている。
「随分上達したね。自主練でもしたの?」半分冗談で聞いたが、彼女はまじめな顔で、
「はい、ほかのスクールにも通って練習をしました」と答えた。
なんと一週間毎日、違うスクールに通い始めたとのこと。

ほどなくして彼女は他の生徒とははるかにレベルの違う腕になった。
「もう、君はこのクラスの一番だよ。間違いなく」言うとそれはうれしそうな顔をした。

二度と、彼女は来なかった。
その他
公開:19/05/29 11:27
更新:19/05/29 11:29

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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