雨の夜。竹藪の細道で

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 雨の夜。竹藪の細道を走っていると、車のヘッドライトが異形のモノを照らし出した。巨大な蛙? いや、それは人間だった。
 坊主頭の人間が座禅を組んだまま、脚の前についた両肘を支点に、じりじりと身体を前方に引きずって、道路を渡ろうとしているのだ。そして、道路の反対側からも、同じモノが同じように道路を渡ろうとしていた。両者は道の真ん中で頭を突き合わせ、しばらく押し合いをしていたが、やがて額を地面につけ、肘と額とで互いに三点倒立の姿勢をとった。座禅を組んだ足がゆっくりと左右対称に持ち上がっていき、両者の腰骨が触れ合うと、ゴリッ、という音が響いた。すると両者の座禅を組んだ足がパタパタと動き始め、ふわりと宙に舞ったのだ。それは「蝶」のようだった。
 私は頭を二三回振って、アクセルを踏んだ。と、車にバン! と何かが落ちてきた。私は無我夢中で、何かを轢いたり撥ねたりしながら、その細道を通り抜けたのだった。
ホラー
公開:19/05/29 07:37
更新:19/05/29 07:40

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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