隠し味にワガママを添えよう

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“きゅ〜っ”
玄関を抜けると、お腹から玩具みたいな鳴き声がした。
家中に広がる柔らかな香り、母特製のスペシャルクッキーだ。
(会合を早めに抜け出してきて正解だった。)
子供の時から変わらない、焼きたてをフゥフゥと十分に冷ましてから食べるのが私流なのだ。

私の家族は母と父、そして少し年の離れた姉の4人家族。
「サヤ、お帰り。今日は早かったのね。ほら、おいで。」
そうやってソファの隣をポンポンと叩く姉は、いつまで私を子供扱いするのやら…困ったものだ。
姉さんはわがままでいけない。
この前だって、私が外出する準備をしていたら、ひっついてイヤイヤとまるで子供みたいだった。
でも、嫌というより、しょうがないなぁと思ってしまうのだ。

だが、いくら姉でも今回ばかりは譲れない。久しぶりのスペシャルクッキーなのだ。
「にゃ〜」
後でね姉さん。
可愛く鳴くから、私だって少しくらいのワガママはいいでしょう?
ファンタジー
公開:19/05/28 19:33
更新:19/06/20 21:38

mono

思いつくまま、気の向くまま。
自分の頭の中から文字がこぼれ落ちてしまわないように、キーボードを叩いて整理整頓するのです。

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