何故、その男は見つからないのか?

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男の目の前で大勢の顧客が怒りを露にしている。
「何が『大船に乗った気でいて下さい』だ!お前の話は嘘ばっかりじゃないか!」
「この詐欺師!金を返せ!」
多くの怒りを受けながらも男は涼しい顔をしている。
「皆様の怒りはごもっともです!しかし、もう少しでも皆様に出資金を十倍…いや百倍にしてお返しすることが出来るんです!もう少しだけ待って下さい!」
顧客は声を荒げた。
「これで何度目だ!もう騙されないぞ!」
男はため息をついた。そして、腕をぶらぶらとさせ始めた。
「何をやっているんだ?」
男は答える。
「ない袖は振れないのです。そして私は自らが起こしたこの風に乗り、大海原に出向します!」
顧客の堪忍袋の緒は切れた。

以来、男は行方不明となった。
警察がいくら探しても男は見つからない。しかしそれも仕方のないことだ。
いくら大船とはいえ、あれほど多くのイカリを乗せてしまえば、浮かび上がるはずもない。
ミステリー・推理
公開:19/05/28 18:50

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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