安藤老人は元気羊の夢を見るか?

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羊が一匹……二匹……三匹……。
暑くて眠れぬ夜に数えていたら羊達め、わしの夢の中に住むようになりおった。しかも元気なのばかりで、始終メエメエと鳴き続ける。
「安藤、そいつらの正体は恐らく、ジンギスカンにされた羊達の怨霊じゃ。目には目を歯には歯を羊には羊をじゃ、これを売ってやる」
そう言って幼馴染みの住職が差し出したのは、一枚の羊皮紙じゃった。
「ここに書かれている経文は、然る高僧が書写したものじゃ。寝る前に唱えてみい、きっと効くぞ」
「わしも仏教に精通しとるわけじゃないが、羊皮紙に写経なんて」
「効くぞ!」
半ば強引に買わされたもんじゃが、その夜以来静かに眠れるようになったわい。本物だったんじゃな……。
あれから一年経つか……しかし可愛い連中でもあったの。あれだけ元気だったんじゃ、今夜くらい夢の中に戻ってくる気がするわい。おまえを乗せてな。
だから今年の茄子と胡瓜の形は、馬じゃなく羊じゃ。
ファンタジー
公開:19/05/30 20:42
更新:19/05/31 06:51
自分の干支に因んだ 話を書こうと思って

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