手渡ししたかった

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「悪性かぁ」溜息混じりに呟いた。今は2031年12月。医学も革新的に進歩しているというのに治せないとは。涙が頬をつたう。27年も結婚を待たせている彼女には言えない。

とある建物の部屋。目の前にプッシュホン式電話機が1台。過去につながるこの世で唯一の未来機器。国が予算を出し人生1回限り使用が出来る。希望の日時と電話番号をプッシュすれば、その日のその電話につながる。亡くなった人と話たい、大切な人に危険を知らせたいなど活用方法は様々だ。

今年の12月14日で彼女は50歳。誕生日に僕は生きていない。1981 12 14と電話番号を僕はプッシュした。呼び出し音がなる。「町田生花店です」「赤い薔薇の花を50本届けてほしいのですが」僕は届け先の住所と名前を伝えた。そして50年間毎年届ける事をお願いした。これで許してほしい。誕生日おめでとう、そしてありがとう。

ん?あれ?支払いってどうなるんだ?
その他
公開:19/05/29 21:09

まりたま

いつか絵本を1冊出せたら...
そう思いながら書いてます。
少しだけホッコリしていただければ嬉しいです。
でも、たまにブラックも書きますけど。

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