白き戦士の片恋

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甘ひだけの男など止し給へ。
幾度、此の台詞を呑んだ事か。私の内で燻る想ひは、貴方の竈の炎にも、断じて劣りはせぬものを。
私が貴方を恋ふ様に、貴方が奴を案ずる様に、貴方は私を見て呉れぬ。然うと知りつつ、淡白な顔を装ひつつ、じりヽヽ縁が焦げて行く。
四角四面な男よと、味も素気も無ひ輩と、きつと皆は陰で思ふ。真つ直ぐ誠実と潔白とを捧げ、貴方を受け止める用意が有ると、如何すれば貴方に伝わるのか。仮令、僅かに頬を染めたとて、貴方の胸から、奴の微笑みは消えぬのだ。

嗚呼、麺麭屋の端子さん。我が永遠の淑女。
私には魔性の赤よりも、貴方の粉に塗れた、青き衣が余程に好ましい。見掛け倒しと嗤われ様と、恋敵の引き立て役に堕そうとも、貴方の為なら、私も笑つて耐えられる。
何時か貴方も気付く筈。貴方に相応しきは私だと。何時か私の腕の中、熱く蕩ける接吻を、、、。
叶わぬ甘ひ夢を見て、私は今日も、真白い戦装束を翻す。
ミステリー・推理
公開:19/05/27 21:11

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

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