最期

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その彫師に思いを語り、入れ墨を掘ってもらうと、そのトキにいけるという。噂を聞いて尋ねてみた。映画で見る阿片窟のような地下通路を通り、階段を上ったところにそれはあった。

ドアをノックする。
「どうぞ」憂い気な声が応える。
ドアを開けた瞬間、

「あっ!」

叫んでしまった。全身入れ墨の男性の姿があった。掘られている絵は様々だ。桜吹雪、天を上る竜、大波のサーフィンに雪だるま。阿修羅もあった。

「それは、みんなここで掘ってもらったものですか?」思わず聞いてしまった。
「ああ、そうさ。俺が行きたかったトキだ。」
どんな人生を送ってきたんだろう。そして時々にどんなトキに行きたかったのだろう。

私が口を開く前に男は言った。
「すまんな、今日も掘ってもらいたいものがあってな。急いでいるんだ」
男は堀師と視線を合わせると、静かにベッドに横たわった。
「何を掘るんですか?」

「彼の死体だよ」
その他
公開:19/05/27 19:21
更新:19/05/27 19:36
スクー 全身入れ墨タイムスリップ

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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