「鰤男」　八章　－腸（ハラワタ）－

その日、静香は所属事務所の社長、小柳　蘭子に呼び出された。
理由は分からないが、「早急に社長室に来い」とのお達しだ。
「なんだろう」
静香は首を傾げ、呼び出される可能性がある懸案事項を色々想像した。　
コンコン
「失礼します」
社長は私が部屋に入るや否やいきなりこう切り出した。
「これはどういう事かしら」
社長は手に持っていた週刊誌「スキャンダル」を机にバンッと叩きつけた。
「こ、これは・・・」
静香は目を疑った。そこにはこう書かれていたのだ。

俳優「峯岸　雅人」に熱愛発覚。
お相手は、なんと、アイドルユニット「響」ボーカル　伊藤静香
人目を避けてホテルでお泊りデートか

「デマです。私は知りません」
「そうなんでしょうね。でも、あなたが何と釈明したとしても周囲は信じないわよ。否定すればするほど炎上するのは自明の理ね」
「一体、誰がこんな事を」
静香は悔しくて腸が煮えくり返る思いだった。