アパート

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アパートのドアを開ける。
「おかえり」
彼がやってきて、そういった。
一緒に暮らしはじめて数カ月になる。
結婚は、まだしていない。
「今日はカルボナーラにしてみたよ」
少し湯気の立ったパスタの上に、黒コショウがちりばめられたお皿を、彼は私の席に置いた。
「どうかな。美味しくできたと思うんだけど」
「うん。美味しいよ」
そういうと、彼は少し笑った。
それからは特に会話もなく、食事が進んでいく。
食べている間に彼がコーヒーを運んでくると、私に小さな箱を見せた。
「これを、君に」
箱の中には、指輪が入っていた。
「結婚してほしい」
彼は、私の返事を待っている。
私が先に、いいたかった言葉なのに。
それが悔しくて、私はいった。
「もっと、感動的なプロポーズがよかった」
「それも考えたんだけどね、君が「はい」っていってくれない気がして」
彼の思いが私には許せなくて、嬉しかった。
公開:19/05/27 15:01

ふじのん

大学生

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