「鰤男」 五章 -魚眼-

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「何も、盗む事だけが目的とは限らないわ。もしかしたら、盗聴や盗撮の可能性だって。私は女子高生だもの。需要はあるはず」
静香は自分にそう言い聞かせ、コンセントや電気製品周辺をドライバーで分解し、不審なものがないか隈なく調べた。
その結果、・・・惨敗だった。
二時間も掛けたのに何の成果も上げることが出来なかった。
「骨折り損のくたびれ儲け」
静香の頭の中では、そんな言葉が書かれた小さな魚達が四方八方から集まり、次第に大きな群れとなって元気よく周回している、そんな映像が見えた気がした。
「やっぱり私の気のせいだったのかな。そうよね。最近、色々と疲れていたものね。今日はぐっすり眠って全部忘れる事にしよう」
ピコーン
その時、チャットの更新音が鳴った。
「誰だろう」
静香は眠い目を擦りながらスマホ画面を覗いた。
鰤男からだった
「お悩み、承りますよ」
正にグッドタイミングである。
「実はね・・・」
公開:19/05/27 12:34
更新:19/05/27 12:35

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