妖怪マーメイド

カメラのファインダーが、沖にある岩場の上に、妙なものを捉え、写真家の男は、興奮気味にレンズの焦点を合わせた。
モデルのような美脚、ウエスト。しかし、上半身が魚の女である。
「マーメイドというより妖怪だな」
美しいマーメイドであれば、きっと素晴らしい出会いだったろう。残念。 被写体としては申し分はない。マスコミには売れるだろう。男はそう思い、ひたすらシャッターを切る。

女は涙を流していた。口をパクパクさせながら。泣いているのか、笑ってるのか、わからない。それが滑稽すぎ、男はクスクス笑いだした。
目が合った！
その女は驚異的な跳躍力でピョンと飛び跳ね、男の眼前に現れた！慄く男。

「よくも笑ったわね」
「許してくれ、つい」
「私を笑いものにするとワラになるわよ」

その女がじっと見つめると、男は黒い煙に包まれバサリと砂浜に落ちた。

女は海に消えた。砂浜にはカメラと藁人形だけが残されていた。