100円玉

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 こんな夢だった。
 煙草の自販機の取出口に手をいれると、大量の100円玉がつまっていたので、私は取り出し口と上着のポケットとを何往復もしていた。すると、背後を女子高校生達に塞がれつつある気配を感じた。そこで私は、溢れ出る100円玉をそこいらじゅうの自販機の上に積んで彼女達の注意を逸らしつつ、「故障の際は」の番号へ電話をかけた。
「ええ。100円玉と大量の女子高校生です」
 蜘蛛の子を散らすように逃げ出した女子高校生達。私は一旦車に戻り、妻に「担当がくるまで待つつもりだ」と告げ、建物へ戻った。すると窓から、古い自販機を担いでいく担当者の太ももが見えた。
「大丈夫でしたか?」
「領収書のところに紙がはさまっていたのです。損金計上するしかないと持ち主には納得してもらいました」
 私たちは握手をした。
 車に戻ると、妻は寝息を立てていた。私が上着を脱いで妻にかけると妻は
「100円玉」と言った。
その他
公開:19/05/28 11:09

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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