「鰤男」 十三章 -魚心-

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「静香さん、本当に鰤男と言う人物は存在するのですか」
鈴木は静香に面と向かってため息まじりに疑問を投げかけた。
「それはどういう意味ですか。」
少し、口調に怒気が混じっていたかもしれない。
「あれからあなたの仰っていた場所を重点的に聞き込みして見たのですが、周辺の皆さんはそんな怪しい人物は見ていないと言うのです。せめてその鰤男の顔写真だとか、どこで働いているだとか分かりませんか」
それを聞き、静香はこの時になって初めて鰤男の顔も本名も知らない事に気付いた。実際、鰤男と彼は名乗っているけど本当は女の可能性だってある。
「分かりません。私は彼の事を何も知らないのです。ネット上で鰤男と名乗っている事以外、何も。あんなに毎日、和気あいあいと親しく話していたのに。それに、なんとなくそれを聞いてはいけない気がしていたんです。それを聞いたら私の元から離れていってしまう、そんな気がして」
「そうですか。」
公開:19/05/28 05:25

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