不幸の手紙

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 一人の青年が、上司の部屋に慌てて駆け込んできた。
「大変です」
「どうしたんだね」
「不幸の手紙が届きました!」
「おいおい君、不幸の手紙って、三日以内にこの手紙と同じ文章で、あなたの友人十人に出さないと不幸になります、っていうアレか?」
「そうです。これは事件です。どうしましょうか」
「何を言っているんだ。大の大人が真剣に考えることではないだろう。バカバカしい」
「でも…」
「いいかね、私は忙しいのだ。そんなものは無視しておけばいいんだ」
「わかりました」
 青年は、一礼をして上司の部屋から退出した。青年が廊下の窓の外を眺めると、不幸の手紙を受信した大きな電波望遠鏡が、朝日を受けて輝いていた。
その他
公開:19/05/26 09:52

黒柴田マリ( ヨコハマ )

黒柴田マリと申します。ショートショート、大好きです。あと、リンゴも大好きです。

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