タシカノカタチ

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「これは?」
「玉虫色のクラゲ」
「これは?」
「逆さに生えた逆茂木」
「これは?」
「ブラックスワンを漕ぐオーム」
まともな答えが返って来ない。わざとに聞こえるけど、本気でそう見えるらしい。
「一皮むけば、どいつも大概だ」
人間には、その人固有の形があると言う。魂か、オーラか、輪廻の残痕か判らないが、彼の眼は、普通の人と違う世界を捉えている。
もっとも、視界は共有出来ない。彼の語るイメージが、私のそれと一致するかも判らない。試みに、カフェの席から往来の通行者を挙げてもらっても、男女も人種も無関係にばらばらだ。
「貴方は?」
「鏡の裏が見えると思うか?」
(見えても驚かないわ)
共有出来ない事は、私にとって苦しく、彼にとって当たり前。つまり、成立し様がないのだ。
「私は?」
テーブルの灯りを弾く。雫色の球面で、LEDと私の影が揺らめく。
「君に見える」
彼の眼窩を覗きたい。未だかつてなく。
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公開:19/05/26 00:08

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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