チックのパン屋 ~コロネ~
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一日分、時を越えた記憶に出会えます。
右目の潰れた男は窓際に座り、あの日を思い出せるパンを頬張った。
記憶が蘇る。
公園を走る少年と少女。追いかけても少年は捕まらない。少女は悔しくて尖った石を投げ……
今や少女は起業家になり、少年は掃除夫になった。
男の傍に女が立っていた。
「償いさせて下さい」
「いいって」
「お願いです。人生をかけてコレを開発したんです」
女は真剣な表情。
男は諦めた顔で頷いた。
「わかったよ」
女は満面の笑みでポケットから紫色の新鮮な目を取り出した。
「おでこにつけるだけで、映像が脳に直接」
「……いらん!」
男は立ち上がり、店を飛び出した。女はぷるっとした目を掴んで追いかけた。
「つけてみて!」「いやだよ!」
二人は駆け回った。あの時みたいに。
「チョココロネのチョコって、黒目みたいだよね」
彼らの嬉しそうな声を聴きつつ、僕らはパン生地をこね始めた。
右目の潰れた男は窓際に座り、あの日を思い出せるパンを頬張った。
記憶が蘇る。
公園を走る少年と少女。追いかけても少年は捕まらない。少女は悔しくて尖った石を投げ……
今や少女は起業家になり、少年は掃除夫になった。
男の傍に女が立っていた。
「償いさせて下さい」
「いいって」
「お願いです。人生をかけてコレを開発したんです」
女は真剣な表情。
男は諦めた顔で頷いた。
「わかったよ」
女は満面の笑みでポケットから紫色の新鮮な目を取り出した。
「おでこにつけるだけで、映像が脳に直接」
「……いらん!」
男は立ち上がり、店を飛び出した。女はぷるっとした目を掴んで追いかけた。
「つけてみて!」「いやだよ!」
二人は駆け回った。あの時みたいに。
「チョココロネのチョコって、黒目みたいだよね」
彼らの嬉しそうな声を聴きつつ、僕らはパン生地をこね始めた。
ファンタジー
公開:19/05/25 20:16
スクー
蘇る鬼ごっこ
たらはかに
https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。
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