新商品

　幻の田丸を求めて、岡山に行ってきた。
　評判がいいのに、どこでどのように作られているかがわからない。
　地元の情報通だという老人を酔わせて、場所を聞き出した。
　苦労してたどり着いた工房は山奥にあった。
「よく、見つけましたね」
　職人は気さくに案内してくれた。
　染色場の次に大きな桶があり、染色後の生地が浮かんでいた。その中心に青いカーディガンを着た男性が真面目な顔で水に浸かっていた。
「あれが田丸さんです。田丸さんを洗った水で晒すことで生地が独特の風合いを持つんです。人柄がにじみ出るんですね」
「だから、深くて柔らかいんですね」
「せっかく来たんですから、どうです？　あなたも」
　
　
「というわけで、これが洗いざらしの田辺なんだけど、試してみない？」
　わたしはジーンズを差し出した。