コンクリート・コンプリート

コンクリートを分解する薬が誕生した。
ダンゴ虫がコンクリートを食べる習性から、研究機関が彼らの体内の特殊酵素を発見。実用化に成功したのだ。
耐久性が高い反面、自然分解の難しいコンクリート。老朽化や放棄による残留施設の処分、道路建設・補修の労力とコストなど、環境・経済に与える影響は大きかった。ダンゴ虫の英名を取り、ＰＢ（Pill Bug）と命名された薬は、国交省の公式採用を皮切りに、建築業に革命を起こし、瞬く間に世間を席巻した。
ＰＢを塗布すると、コンクリートは分解、原料に戻る。濃度調整で分解深度が変えられ、修正も容易なので、アスファルトが主流だった道路も、建築物も、軒並み鉄筋に変わった。再生コンクリート（エココン）ブームが到来し、世界は灰色に覆われた。

やがて戦争が起き、ＰＢは軍事利用に移行した。
灰色の砂漠に鉄と血と骨が混じり、灼熱と洪水が繰り返し、世界は一枚板のコンクリートになった。