夢の夢は夢か

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「醒めない夢が見てえなぁ」
ぽかぽかと柔らかな日差しが差し込む部屋は、起きたばかりだというのにふわふわと眠気を誘う。
「覚めない夢?どうしてそんなこというの?」
ベッドによりかかり、心底不思議そうに首を傾げる彼女が瞬けば、夜明け色に染まった瞳がキラリチラリと顔を覗かせる。
タンザナイトのように美しくも無機質な瞳は、時々全てを飲み込んでしまうんじゃないか、なんて馬鹿な事をいつも思う。
「そりゃあ夢っていったら、なんもかんも自分の思うまま。空に金魚を泳がすことだって造作ねぇ」
「まぁ、夢だもの。自分の思ったことが起こるのは不思議じゃないわ」
そうでしょう?と微笑む彼女は、まるで絵画だ。
熱を持つ頰を誤魔化すように、窓の外を見上げた。

(夢がみたいなんて、随分な皮肉。私が貴方の夢なのに…覚めない夢も、夢だとわからなければ夢で無くなってしまうのね)
窓の外では、金魚が元気に空を泳いでいた。
公開:19/05/26 17:19
更新:19/05/26 22:55

mono

思いつくまま、気の向くまま。
自分の頭の中から文字がこぼれ落ちてしまわないように、キーボードを叩いて整理整頓するのです。

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