わらしべにんぎょ

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人魚姫は王子様のいる部屋に入れず、心臓を奪うことができませんでした。

「消えてたまるかー!」
悔しさのあまり渾身の力を振り絞ると、失ったはずの声が戻りました。
ナイフを持ったまま途方にくれていると、厨房で切れ味の悪い包丁を使う料理人がいました。
「よかったらこのナイフ使いませんか?」
「おお。こいつは良いや。お礼にシャンパンでも飲むかい?」
お酒が飲めない人魚姫はグラスを持ったまま、甲板にいた女性に声をかけました。
「頂きものですが、よかったら…」
女性は大喜びし、つけていた髪留めを人魚姫にあげました。

人魚姫は髪留めを使い、部屋の鍵を器用にこじ開け、王子様を叩き起こしました。

「あなたを助けたのは私なの」

寝ぼけ眼の王子様は、人魚姫の頭にポンと手を置きました。
「君は一生、僕の大切な妹だよ」

人魚姫の瞳からは、大粒の涙が流れ落ち、やがて、自らの涙の中に溶けて消えてしまいました。
その他
公開:19/05/24 02:13
スクー わらしべマーメイド

ぱせりん( 中四国 )

北海道出身です。

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