RED PERCOLATION #20

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春眠暁を覚えずか、良く言ったものだと思う。

春。とても暖か。ここ最近、夜になると冷え込む日が続いていたが、今日はそうではない。
ここまで気持ちの良い夜は珍しかった。

目を閉じてはいるが、それでもとても眠かった。

眠い。が、眠るということに対して、ここまで愛しさを感じることなど、生まれてこの方なかった。
こんなに素敵な行為を私はずうっと繰り返してきたのだ。

理由もなく、感謝したくなった。
身の回りの全てに、感謝したくなった。

眠さが強くなる。布団と枕の感触を味わう。

こんなに心地よかったのか。
心地よいを通り越し、美しさすら思えた。

人の穏やかな熱気を感じ、少しだけ目を開ける。

息子、娘、孫、そして最愛の妻。
皆だ。皆が見守ってくれているのだ。

そうか。

極楽浄土は、

すぐそばにあったのか。

私は今、

人生史上、

最大に、

幸せだ。


ありがとう。

【臨終】
その他
公開:19/05/23 22:39

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