君が死ぬ夏

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君こと俺の幼なじみは、夏になると必ず一度は死ぬ。大抵は人の手によって殺されるので、その度に俺はこの世界を恨む訳だが、またすぐに会えてしまうので恨みは長続きしない。
無愛想で厚かましく、図々しくも憎めない幼なじみは、俺が物心つく前からずっと一緒にいた。夏を共に生きてきた。今年の夏もまた会えるだろう。
ある日、母親が幼なじみを殺す道具を買ってきた。そんな道具があることが、何よりそれを実の母親が買ったことが許せなかった。
その殺戮兵器から発生する煙は、幼なじみを苦しませ、死に至らしめる。許せなかった。
いくら何度も生まれ変わってくるとしても、殺していいことになどならない。もちろん俺は抗議した。幼なじみを殺すつもりかと。母親は発狂して、いい加減にしろと怒鳴った。
いい加減にするのはそっちだと、俺は思わず母親を殴り飛ばした。母親は死んだ。意味のなくなった蚊取り線香だけが、無意味に床に転がっていた。
ホラー
公開:19/05/23 19:13

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