剥離症

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剥離症というものがある。その名の通り剥離する症状だ。
この症状の珍しい所は、物理的に剥離することとはまったく別物であることだ。剥離と聞くと、人はなんとなく想像ができるだろうし、なんとなく説明もできるだろうが、剥離症が指す剥離は少し異なっている。
剥離症とは、人間関係や精神面、その他諸々の見えないものに対して発症するものである。
とはいうものの、この症状を確実に的確にこと細やかに説明できる人間はいない。説明をされても、そもそも剥離されたという自覚すら持てないことが、この症状の厄介なところだ。
かくいう俺も患者の一人であり、こうして一人語りしている傍ら、病魔に蝕まれているという訳だった。
他人から剥離症だと指摘されるが、やはり自覚など持てずに日々を生きている。
俺のことを剥離症だと指摘する彼等は、どうやら俺の家族や恋人であったらしいが、やはり俺は、自分が患者であるという自覚などなかった。
その他
公開:19/05/23 19:02

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