蔵闇

悪戯ばかりする俺は罰としてよく蔵に閉じ込められた。
光射すことなく、時間の感覚すら曖昧になる暗闇を皆が恐れる。
しかし俺は怖くない。むしろ何が怖んだ？暗闇はこちらが話しかけると返してくれるような友好的な奴だ。何が怖いのか理解できない。
暗闇は色々なことを教えてくれた。親父が昔ここに閉じ込められた時の事を教えてくれた。それで大泣きするなんて情けない。
暗闇は美味しいものをくれる。俺はこんな美味いものを食べたことがない。
あ～あ、いっそのことここに住んじまおうかな…
おっと、蔵の扉が開いたようだ。じゃあな暗闇。また今度…あれ？なんで親父、知らない子の手を握っているんだ？
いや、あれは俺だ。何で俺があそこにいるんだ？
『お望み通り、代わってやるよ。僕は光ある世界を歩みたいんだ』
暗闇は俺の顔で夜空に浮かぶ三日月のような笑みを浮かべ別れを告げた。
以来俺は闇となり、蔵から出ることが出来なくなった。