月の泡

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ある路地裏には、夜になると炭酸水が湧きだすらしい。
そんなうわさ話を聞いて、ここにやってきた。
時刻は夜九時。
外灯は普段見ているものと何ら変わりはない。道にも変わったところはない。
きょろきょろと辺りを見回してみるけれど、それらしい現象は一向に起こらない。
ため息をついて帰ろうとしたその時。
ぷしゅううう。
何かが漏れ出す音。
逸る気持ちを抑えてもう一度それを探す。
あった。
外灯の下、午前中に降った雨でできた水たまり。一か所だけやけに輝いていて、そこから音が聞こえる。
ごぼり。
そこが一瞬、膨らんだかと思うと、一気に液体が周囲の空間を呑み込む。
波に揉まれる。微かに泡がはぜる音が聞こえる。波間に満月が揺れる。

しばらくするとそれは引いていった。
辺りは静まり返り、すこし動いただけで壊れてしまいそうな空気に包まれていた。

なぜか、月の表面が少し泡立っているように見えた気がした。
ファンタジー
公開:19/05/25 17:00

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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