お人形の顔

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 夕方、お人形の小さな手を拾った。中が空洞でビニール製のプクプクした肌色の右手だ。次の日起きたら、自分の右手がそのお人形の右手になっていた。その日の夕方、お人形の小さな右足を拾った。右手と同じプクプクで空洞の右足だった。次の日起きたら、自分の右足が、そのお人形の右足になっていた。その日の夕方にはお人形の左手を拾い、その次の日の夕方にはお人形の左足が落ちていた。僕はそのお人形の左足を、お人形になった右手と、今朝お人形になっていた左手とで挟んで拾った。次の日から僕は立ち上がれなかった。両足がお人形の空洞のプクプクになっていたから。
 週末、玄関チャイムが鳴った。僕は起きられないので無視していたら「ねえ。わたしー。大丈夫ー?」という彼女の声。「合鍵で入って!」と大声で応えると、カチャカチャという鍵の音と扉の開く音に続いて、声が聞こえてきた。
「扉の前にお人形の顔が落ちてたから拾ったんだけどぉ」
ホラー
公開:19/05/23 10:17
更新:19/05/23 21:08

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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