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樹の形をした、水の表面に掌を当て、霧が天を目指す様な上昇運動を感じる。
頭の中が、新皮質から脳幹まで、表皮を剥いだ葉緑体の色に澄んで、この身体も、人の容をした水なんだと自覚する。
顎の仰角を幹の垂直に沿わせ、延長線上に指を滑らせて行く。角質と細胞壁が融和するイメージ。爪の半月は木漏れ陽の感触に染まっている。
踵が上がり、足先に体重が掛かる。
まだ。もっと軽く。貫く様な透明な柱を連想する。
水の樹と一体になって、ガラス繊維に似た毛細管枝を伝い、葉脈の果てで気孔から蒸散される。血管を流れる体液も無色に変わっていく。元から稀薄な影は、とうに樹形に紛れている。
――ベクトルが重なる。何処かで臨界点を超え、大地を浮く。真っ直ぐに空を想う。
間に立っている自分に気付く。
水を含んだ、柔らかな肉の外殻を、鼓動する音を感じる。
朝露を額に受けながら、縛られている事に泣きたくなり、片方で唇は微笑っている。
頭の中が、新皮質から脳幹まで、表皮を剥いだ葉緑体の色に澄んで、この身体も、人の容をした水なんだと自覚する。
顎の仰角を幹の垂直に沿わせ、延長線上に指を滑らせて行く。角質と細胞壁が融和するイメージ。爪の半月は木漏れ陽の感触に染まっている。
踵が上がり、足先に体重が掛かる。
まだ。もっと軽く。貫く様な透明な柱を連想する。
水の樹と一体になって、ガラス繊維に似た毛細管枝を伝い、葉脈の果てで気孔から蒸散される。血管を流れる体液も無色に変わっていく。元から稀薄な影は、とうに樹形に紛れている。
――ベクトルが重なる。何処かで臨界点を超え、大地を浮く。真っ直ぐに空を想う。
間に立っている自分に気付く。
水を含んだ、柔らかな肉の外殻を、鼓動する音を感じる。
朝露を額に受けながら、縛られている事に泣きたくなり、片方で唇は微笑っている。
ファンタジー
公開:19/05/25 00:00
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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